AIでつくった成果物が、どれも似て見える理由

AIは学習データの平均を返す。だから同じモデルを使うチームは、似通った成果物にたどり着く。AIの出力が均質化する仕組みと、自社の仕事を「自社らしく」保つために必要な条件を整理する。

AIでつくった成果物が、どれも似て見える理由

AIが生む成果物が、どれも似通って見える理由。


クリエイティブディレクターがAIで生成した30案を開く。どれも悪くない。ただ、一つを選ぶ理由が見つからない。破綻はしていないが互いに置き換え可能で、しかも来週、通りの向かいの代理店が持ってくる案とよく似ている。

プロンプトが悪いわけではない。これは、この技術がやっていることそのものだ。

Figma CEOのDylan Fieldは、2025年10月のLenny's Podcastでこの仕組みをこう説明している。AIが最初に返すものは、定義上ありきたりだ。学習したすべての平均だからだ、と。Merriam-Websterは2025年の「Word of the Year」に「slop」を選び、AIが大量生成した低品質なデジタルコンテンツと定義した。この言葉が広まったのは、多くの人が「似ている」という感覚を、言語化できる前から感じ取っていたからだろう。

「平均化」という問題

モデルはプロンプトに対して最も確率の高い出力を返す。確率が高いとは、ありふれているということだ。ありふれているということは、他社にも同じものが返っているということだ。

集団への影響を測った研究もある。Anil DoshiとOliver Hauserが2024年にScience Advancesで発表した実験だ。ライターにAIの補助を与え、その成果を評価したところ、AIを使った作品のほうが、使わなかった作品より創造的だと判定された。ところが、作品同士を比較すると、AI補助を受けたグループのほうが明らかに似通っていた。個々では上がり、全体では狭まる。

いま多くのチームは、気づかないうちにこの取引をしている。一人ひとりの成果は上がる。会社全体の成果は、他社と同じ方向へ収束していく。

これがコストになる理由

エージェンシーの商品とは、他所では手に入らないものだ。ブランドの強みは、識別できることだ。ゲームスタジオが生き残れるのは、他にない絵づくりがあるからだ。

AIが競合すべてに同じ平均を差し出すのなら、生産量はもう差にならない。全員が持っているからだ。残るのは、30案を並べて「これは平均だから外す」と選び切る仕事、あるいは30案すべてを捨てる判断だ。

かつてこの選択はプロジェクトの最後の5分だった。いまはプロジェクトの価値の大半を占める。

誰も選ばない、という問題

会議を思い浮かべてほしい。30案、どれも及第点、決め手がない。全員に少しずつお気に入りがある。誰も残り29案を切り捨てたくない。会議は「少し寝かせて考えよう」で終わり、案はフォルダに送られ、最も無難なものが自動的に世に出る。

ここで起きたことに目を向けたい。誰も「ありきたりでいこう」と決めたわけではない。反対する人がいなかったから、ありきたりが勝った。それだけだ。

実務における「センス」とは、そういうものだ。気分ではない。30案を前にして「これだ、理由はこう、他の29案はここで死ぬ」と言い切ること。誰かがその議論を、口に出してやる覚悟を持つ必要がある。

その議論の場が、チームにはない

案はSlackのスレッドに一列に積み上がる。5つ目まで来たときには、1つ目の記憶はもう薄い。あるいはDriveに1ファイルずつ入っていて、記憶を頼りに比較することになる。

UCサンディエゴのDavid Kirshは、人が頭の外にあるものを使ってどう考えるかを長年研究してきた。結論はシンプルだ。人はすべてを一度に、目の前に並べて見られるときに、いちばん深く考えられる。スレッドではそれができない。フォルダでもできない。

だからチームは、実際には「比較」をしていない。画面に映ったものに順番に反応しているだけだ。最後は部屋で一番強い意見か、締切が勝つ。半年後に振り返っても、なぜその案に決まったのかを誰も再構成できない。

いまのツールはそのまま使えばいい

デザインはFigmaで、ファイル管理はDriveで、進行管理はJiraで、ワークショップはMiroで。どのツールも優れている。ただ、30案がテーブルに並び、29案を切り捨てなければならないその瞬間のために作られてはいない。

ゲーム開発におけるALLOの活用例
ゲーム開発のためのALLO

私たちがつくったもの

ALLOは、まさにその瞬間のためのキャンバスだ。案がブリーフやリファレンスと横並びに置かれる。フィードバックはスレッドを漂うのではなく、対象そのものに紐づく。チーム全員が一度に全体を見渡し、作品を前に議論し、決めることができる。決定は、その根拠のすぐ隣に残る。だから半年後でも、「なぜそう決めたか」はそこにある。

ALLOは制作ツールではない。制作はこれまで使ってきた場所で続けてほしい。

モデルは今後も進化し、返してくる平均のクオリティも上がっていくだろう。ただ、それが平均であることは変わらない。あなたの仕事を「あなたらしい」ものにするのは、結局のところ、誰かが選んだという事実だけだ。


FAQ

AI生成コンテンツはなぜどれも似て見えるのですか? モデルは最も確率の高い出力を返します。それは学習データの平均です。似たモデルを似たプロンプトで使えば、似た結果になります。FigmaのDylan Fieldも、AIの最初の出力は定義上ありきたりだと述べています。

AIはチームの創造性を下げますか? 個人単位では下げません。DoshiとHauserによる2024年のScience Advancesの研究では、AI補助を受けた文章のほうが、受けていない文章より創造的と評価されました。ただし補助を受けた作品同士は互いに似通う傾向があり、個人の質が上がる一方で、集団としての独自性は落ちました。

AI成果物がありきたりに見えないようにするには? 誰かが平均を拒否することです。個人またはチームが全案を並べて直接比較し、最も無難なものではない一案を、理由を添えて選び切る。それだけです。

「AI slop」とは何ですか? Merriam-Websterが選んだ2025年のWord of the Yearで、AIが大量生成した低品質なデジタルコンテンツを指します。技術的には問題ないのに、まったく記憶に残らない出力を表す言葉です。

ALLOはFigmaやMiroを置き換えますか? いいえ。制作はFigmaで、ワークショップはMiroで、これまで通り続けてください。ALLOは、制作のあと、リリースの前に、案を並べて比較し、方向を決めるための場所です。